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newsletter vol.4 女流棋士 高橋 和さん

 
特別インタビュー

高橋 和(たかはし やまと)さん 
女流棋士三段
将棋教室 Shogimadame主宰


昨年、女性が将棋を気楽に楽しめる2つの教室をスタートさせた高橋さん。
ワ・ミューズではShogimadame(将棋マダム)を開いています。
将棋というと難しい、敷居が高いという印象がありますが、
何も知らなくても始められますという言う高橋さんのレッスンや、
将棋を学ぶ面白さについてお伺いしました。



■初めてでも大丈夫。ゼロを1にすることから始める




高橋さんが昨年開いた女性を対象にした2つの将棋教室Shogiotome(将棋オトメ)とShogimadame(将棋マダム)。平日の夜でOLの方が中心なShogiotomeに対して、お子さんがいる方でも参加しやすいようにと午前中の教室にしたのがワ・ミューズのShogimadameです。女性だけを対象にした教室を開いた理由をお伺いすると、
「将棋をする女性が占める割合が1割にも満たない状況なんです。囲碁は男性・女性が50パーセントずつなのに比べ、なぜそんなに女性が少ないのかと考えたときに、将棋は難しいとか、男社会であるとか、敷居が高いというイメージがあるからではないかと。そこを私が変えられるかなと思ったんです」と高橋さん。盤上には、相手と自分で20駒ずつ、合わせて40駒がのぼり、駒の名前や動き方を覚えるだけでも大変と思いがちですが、
「今日も駒の名前も動かし方も知らないでいらした方が、将棋を指し始めていましたし、ぜんぜん難しいことはないんです」。教室で、普通よりも小さな盤に数個の駒をのせて高橋さんと対局している方がそうでした。初めての人でも将棋というゲームを楽しめるように、いきなりすべての駒を使うのではなく、ミニ盤で数個の駒から始めて学びながら、徐々に本将棋に移っていくそうですが、「将棋が楽しいのは、王様(玉)を捕まえたっていうところにある」ので、どうしたら王様を攻略できるのか、その道筋を描けるようにアドバイスをしていきます。どうりで、集中の仕方が普通に対局しているとしか思えず、まったく初めての方だったと気づかなかったはずです。
「まったく知らないことを知る、ゼロを1にするところに特化した先生になりたい」と言う高橋さん。「初めてでどうしようっていう顔が、ふっと分ったという顔に変わる瞬間が見えるときがあって、それは自分のことのように嬉いですね」






■ひとりひとりの性格に合わせてすすめるレッスン

ワ・ミューズの教室では、机を四角に囲んだ中央に高橋さんが回転椅子に座って、同時に何人もの生徒さんと対局していきます。こちらの生徒さん、次にはあちらの生徒さんと、次々にクルックルッと椅子を回転させ、盤を見るやいなや瞬時に一手を指し、アドバイスしていく早業にこちらの目が真ん丸になるほどですが、「8人指しとかは普通にやりますが、プロの棋士であれば誰でもできること」とサラリ。しかし、何よりも高橋さんのレッスンで特徴的なのは、生徒の方々の性格に合わせて、言葉の選び方や伝え方、指導の仕方も変えていくということです。 「少し背伸びをした問題を出したほうがいい人もいますし、小さな階段を作って一歩一歩進んでいくほうがいい方もいるので、ひとりひとりの性格を見ながら、教え方も変わってくるんですね」。そんな指導の成果ともいえるでしょう。昨年11月の日本女子プロ将棋協会主催の団体戦で、駒の動かし方も知らずに始めて1年にも満たなかったShogiotomeのメンバーが優勝するという快挙を果たしました。本人たちの熱心さの賜物と高橋さんは言いますが、大会の1か月前からメールで毎日課題を出して「鬼特訓(笑)」をしながら、生徒の方々の力を引き出した高橋さんの努力も大きく影響しているに違いありません。 「対局で教え子が勝ったときは本当に嬉しいです。私が対局を引退して8年になりますが、みなさんの分った!というときの目のきらきらを見たり、教えるのが好きなんですね。今がいちばん楽しいです」と言う高橋さんの目もきらきらと輝いていました。







■醍醐味は、日常では味わえない「真剣勝負」の世界

「女性ってひとつのことだけを楽しむんじゃないんですね」と高橋さん。「棋士が良く通っているお蕎麦屋さんに行ってみようとか。大盤解説会(大きな対局があったときの解説会)に、一人で行くには心細いからとマダムとオトメの方が誘いあって、分らないなりにも何か楽しい!とかって(笑)」。そんな楽しみ方は、小さい頃からプロの世界しか知らなかった高橋さんには新鮮で、「知らなかった人たちが将棋を介して輪になって、新しい楽しみをみつけていくことは嬉しい」と語ります。しかし、何といっても将棋の面白さは、「日常では味わえない真剣勝負に尽きます」。 「普段の生活の中で、勝負するということが女性は少ないと思うんです。たとえば子どもが何かで負けて悔しいというのは、自分のことではないんです。自分自身で選んだ手を指していって勝ったときの喜び、負けたときの悔しさや次は勝つぞという気持ち、その勝負の世界を味わってもらいたいですね」。先日、大会に参加した生徒さんが、「負けてあまりの悔しさに電柱をがんがん蹴っちゃった(笑)」と報告してくれたそうですが、そうした「普通の生活では経験できない心の振幅」を将棋を介して体験してほしいと語ります。 「将棋はどんなにいい手を指していても、王様を捕られたら100対0で負けたのと同じこと」。だからこそ勝ったときの快感や負けた悔しさもひとしおで、そこに真剣勝負の醍醐味があるのでしょう。教室では生徒同士の対局もしますが、高橋さんは大会に出ることを積極的に勧めています。 「教室での対局は、結局は練習で、それだけではあまり強くなれない。大会に出たら手が震えて何をしているか分らなかったという生徒さんもいて、それくらい緊張するのですが、そうした本番があってこそ上の段階にいけるんです」







■将棋が初めての人が参加できる大会を企画中

「将棋の対戦相手は自分自身」と高橋さん。「負けたのは、相手が強かったからなのではなく自分が弱いから。ですから相手が問題なのではなく、自分自身が強くなればいいことなんですね。人がこう言ったから、環境が悪いからとか周りのせいにしたくなることもありますが、自分で考えて選択した手で負けたのだから、責任は自分自身にある。そこに気づくと強くなれるのです」。そして、負けたときは「負けました」と挨拶して終えるのがマナーだそうですが、自分の負けを言葉にして認める。将棋というのはとても潔く、高橋さんの言うように澄んだ水のような「透明な世界」であることに気づかされます。  今、高橋さんが力を入れたいことは、もっと気軽に将棋を楽しむ間口を広げていくこと。 「私の棋士としての役割は、まず敷居を低くすることだと思っています。将棋界って来るものは拒まずですが、いらっしゃいとは言わない。将棋を知らない方が、どうしたら興味をもってくれるのか、そういうところに力を入れて、いろいろな企画や運営をオーガナイズしていきたいと思っているんです」。実際、初めての人でも参加できるような大会の準備を進行中とお聞きしました。






「経験のない人が、どきどきしながらも出られる大会を企画しています。そこには、将棋を始めてから間もないマダムやオトメの方、教え子の子どもたちも気軽に参加できるようするつもりです。世代を超えた縦のつながりをもつと、また違う広がりも出てくるのではないかと期待もしていて、夏には実現させようと頑張っているところです」。
対局を引退して後悔したことはありますか?という質問に、「まったくありません。こんなに楽しいのに、なぜ?って(笑)」と即答。涼やかな明るい笑顔を絶やさない高橋さんのお話に、将棋の魅力がぐっと身近にせまってきたのでした。



■プロフィール
1976年神奈川県生まれ。日本将棋連盟女流三段。小学校1年生から将棋を始め、佐伯晶優秀八段門下で研鑽を積み、14歳で当時最年少の女流プロ棋士に。A級在位通算7期。2005年子どもたちへの将棋普及活動に力を入れたいと対局を引退。現在、子ども教室、女性の将棋教室Shogiotome、Shogimadame主催。小学校2年生の男の子の母。著書に『女流棋士』(講談社)、『女流棋士のONとOFF』(中公新書)、『和の将棋かるた』(奥のかるた店)など多数。


HP   :http://www.shogiotome.com/
ブログ:http://ameblo.jp/takahashi-yamato/

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AERA 
「女子が殺到! かくも面白き 将棋の世界」 2013.11.18 no.49
将棋女子の立役者 高橋様主宰のレッスン風景が取り上げられています。
「Shogiotome」「Shogimadam」 2クラスのネーミングも女性ならでは。
アマ大会団体戦でも、優勝を飾っていらっしゃいます。




将棋の森 2016年6月1日吉祥寺にオープン!
長年に渡りWAMUSEでご活躍の女流プロ棋士高橋 和様が、
この度新しい形の将棋スペースを開設されました。
女性や子どもたち、はじめての方でも気軽に集える将棋教室です。
様々なイベント開催中。将棋好きの方ぜひ一度ご見学を。